クレーム物語
ノートの事件のことが腹が立つのでやはりNEC社長に直訴することにしました。
相手は従業員15万人、総売上5兆円の組織のトップ、たかが1ユーザーのクレームに動じるとは思えませんが、NECのお客様センターに「どうしてくれるねん」と社長宛にEメールを送りました。
運良くそのEメールが社長の目に届き、社長はこりゃひどい話だってんで、社内内偵調査をしてみると修理を担当した営業所の社員たちは、連日夜遅くまで呑めや歌えで宴会を開いており、そのため二日酔いで、修理中に居眠りをしていたのが発覚しました。
NECの幹部はこれは信用問題だ、怒り狂った僕にテロでも起こされては大変だと僕の家に誤りに行ったり、上へ下への大騒ぎになりました。
報告をうけた社長は各地の支社、営業所、また外国の駐在所の責任者全員、ついでに掃除のおばちゃんも召集し、緊急反省会議を開くことを決定しました。
会議の会場は本社所在地の東京港区芝にある通称スーパータワーで、社長を載せたリムジンは正面玄関車寄せに停車しました。
出迎えに出てた社員が後部ドアを開けると、2名の若い女性が下車し、それぞれ手に持っていた籠から花びらをばらまくとメガネの男性が下車しました。社長です。
彼女達は、どこぞの国の指導者同志に喜びを与えるために結成された喜び組といわれる組織の女性にも負けない美形です。彼女達はMEC選りすぐりのトップクラスの容姿で、歌・パラパラダンス・テレビゲーム・果ては社長の将棋のお相手などありとあらゆる芸に精通しており、NECのおヨロコビ組といわれ、社長室で破廉恥な踊りをして社長を喜ばせているかどうかは不明です。多分秘書だと思います。
女性も少なく綺麗どころはいない中小企業で結成したとすれば、ぬか喜び組と名付けるのでしょう。
一方会議が行われる会場では暗く照度が落され、七色のスポットライトがぐるぐる照らし出しています。
集まった社員達は”NEC”と書かれた鉢巻をしめ、片手には自社ノートPCのLave、もう片方にはオペラグラスを持っています。目の悪いものはオペラグラスで社長の顔をよく見ろと言うことでしょうか。その奇妙な格好はNECの会議では定番のきわめて自然なスタイルです。
なぜかプロレスラーのアントニオ猪木の入場テーマソング”炎のファイター”が流れだし、社長が会場の花道より入場してきます。社員達はまたかよとあきれた顔はまちがってもできません。全員立ち上がり拍手で社長を迎えます。
演壇に上がった社長はマイクを持って「元気ですか~」「1・2・3・ダーッ」と拳を振り上げ、みんなも「ダーッ」と合わせていますが一部の定年間近の頭のかたい社員やおばちゃんはリズムについていけず、かけ声がズレているのが少し気になります。
プロレスファンの社長はおふざけもそこそこに、「多忙な中こうして諸君に集まってもらったのは他でもない」と切り出しています。
「既にみなは聞いていると思うが、情報化社会のこの時代、とっくの昔に聞いていなければ失格だ。みなの間では、「クレーム事件」とか言ってるやつだ。二日酔いの頭で修理をしているやつがいるなんて、ワシには考えられんよ、酒をやめろとまで言わんが・・・
(なんだか社長の様子が変です)・・・ワシだって酒好きだったがやめてしまったんだ、このワシだってやめたんだ。ああそれなのワシャ信じられんよ」と社長はかつて酒をやめる為断酒会なる組織に入会してまで通い、禁断症状に苦しみながらもついに酒をやめた信念の人ですから、その経緯を思い出したのか、思わず涙ぐみ、なにやら一人で興奮しています。
断酒会では一人では酒がやめれない可愛そうな人達に少々手荒な処置によって酒を断ち切らすのですが、この組織では一般には知らされていない裏コースがあって、こちらでは酒が呑めない可愛そうな人達に少々手荒な処置によって大酒呑みに仕立て上げるという教育があり、講師はジャッキーチェンの師匠である酔拳のおじいさんが担当し、無理やり酒を呑ませてアルコール中毒にしてくれるそうで、酔拳はオプションで教えてくれるそうです。
この裏コースはビール会社のア○ヒやキ○ンに入社したうぶな新入社員の研修コースにも指定されており、どうもこの組織こちらが本業で、世間の目をカモフラージュするために断酒会と名付けているようです。
社長が酒をやめようとしたいきさつは、銀座のとあるカフェで茶のみ友達とお茶してた際、ふと眼に止まった横顔が藤原紀香に似たいい女、これはてっきり、彼女がお忍びで遊びに来ているところに出くわしたか、と思ったそうです。
一目見て松田聖子のように「ビビビ」とインスピレーションを感じた社長はカバン持ち係の秘書に「君は次の異動ではどこのポストが希望なんだ」と昇進を餌に彼を引き寄せ、なにやらヒソヒソ話をしていました。
社長は何故、藤原紀香がここにおるのだ。彼女のことだ、コマーシャルの打ち合わせかなんかで人を待っているのだろう。しかし、なぜこのとあるカフェのカウンターに客待ち顔で座っていなければならないのだろう。
陣内智則との結婚式で出費がかさんだとか、ここで荒稼ぎしなきゃあならない理由があるのだろうか、若い男は飽きて、金持ちのじじいでもカモってやるかと銀座にきたのか?
そのとき茶のみ友達は、一流上場企業、世界のNECのトップならここまで考えるのか、やっぱしと思ったそうです。
昇進ニンジンを眼の前に吊るされた秘書が交渉にあたり、結局「ノリカ嬢(人権的配慮からここでは本名は伏せます)が『金持ちなら誰でもいいのよ、でも私は酒臭い人だけはごめんだわ』と言ってます」と秘書が社長に耳打ちしたことが社長が酒をやめる決心をさせたそもそもの発端です。
社長は酒をやめるきっかけが女性をものにするための不純な動機であることを忘れ、断酒会で酒がイヤになるように青汁カクテル(ビールを青汁で割ったもの)を強引に飲まされ、もがき苦しみ続けたつらい日々だけを思いだし、ついつい興奮したようです。
会場にはカメラが設置されており、会議の様子は警備室と会長室に送信されております。
この前もマイクロソフトのビル・ゲッチュウ会長との会談の席で興奮し、NEC会長から「君は話の途中でどうして興奮してしまうんだ。えっどうしてだね」と度々注意を受けているので、社長は自ら興奮するなと言い聞かせるように「ゴホン」と咳払いをし、平常心に戻りました。
一呼吸し、社員達を眺めるとオペラグラスの対物レンズが社長に向けられているのに気がつきました。
社長は「私は注目されているのだ」と意識しました。
社長は話を続けます。
「・・・ということで社則に新たな項目を制定しました。新たな社則は『二日酔いの状態で修理をしてはいけない』と決めましたので今後このようなことがないようにしなさい」と訓示しました。最後に「するのだ」と言わずに「しなさい」と言ったのは、興奮していない自分を、この光景を会長室でたぶんご覧になっているだろう会長さんを意識して言ったようです。
その後、修理を担当した営業所は閉鎖になり、僕が夢でうなされないようにと、
スーパータワーの屋上に4体の仏さんを祭ったそうです。
注意:この話はフィクションです。
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